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介護保険のしくみ全体像 |
介護保険のしくみ |
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介護保険のしくみを、他ではなかなか見られない視点で説明っ(^^)V このページでは、これまでに説明した、保険料納付や要介護認定の仕組み、サービス利用についてなどの補足的なことを含め、全体像の説明をさせていただきます。 【介護保険の財源について】 ※下記の説明は平成18年度(第3期)に基づいた説明です。平成24年度(第5期)は、第1号被保険料は 21%、第2号被保険料(支払基金交付金等)は29%となっております。 今まで、3年(1期)ごとに、第1号被保険料と第2号被保険料の割合が1%づつ増減しています。
表1.費用負担のありかた
※介護給付費、国の負担は5%の調整交付金含む。 地域支援事業に対する国の負担は調整交付金に相当する仕組はない 包括的支援事業・任意事業費の31%相当分の割合は 国1/2、都道府県1/4 市区町村1/4であるので、全体では、国40.5、都道府県及び市区町村は20.25%、残り19%が第1号被保険料の負担である。 〈調整交付金とは〉 このサイトでも、各種パンフレットでも、「国:25%」などと表示されていることが多いが、全国ベースでの調整交付金の割合は5%であり、介護給付費負担金20%と合わせて25%ということです。 市区町村「保険者」の負担金受入をベースにすれば、必ずしも5%とはなりません。 例えば、仮に、後期高齢者(75歳以上)の割合が多く、所得段階も低所得者の割合が多いA市は調整交付金交付割合が6%、逆に所得水準が高いB市が調整交付金交付割合4%とします。 この場合、A市は、国26%、第1号被保険料18% B市は、国24% 第1号被保険料20%というふうになります。 このように、各保険者の実情をもとに調整される部分であります。 単に、給付実績に基づく介護給付費負担金と違って、所得段階別被保険者数など、細かいデーターをもとに割合が決定されるため、会計検査などにおいて「不適切」として返還を余儀なくされるケースがあるのが、この部分でもあります。 市区町村は、このようなことがないよう、「被保険者台帳」を適切に管理しなければなりません。 パンフレットなどを見て「調整交付金部分含む」などの表示があるもの、ないものがあったりして、イマイチ分かりにくかった(そこまで細かく知る必要もないのかもしれませんが)部分について、ご理解頂けたと思います。 上記のグラフや表に係る部分は、あくまで保険給付に関する部分であり、介護保険の運営には、一般の方の税金(一般財源)が含まれます。給付費部分も、市区町村の12.5%の部分は一般財源です。 保険者ごとに、どのように介護保険事業が運営されているのか説明します。 まず、介護保険は「特別会計」です。介護保険特別会計について、ごく簡単に説明します。 また、これに沿って色々説明します。 表2.介護保険特別会計のおおまかな内容について
(一口メモ) 「全国の市町村(保険者)財源の状況」 表2、及び下記のフローチャート図をご覧いただくと分かると思いますが、介護保険の財源補填計画は、19%相当の第1号被保険料の部分で行っています。 余剰金は「介護給付費準備基金」に積み立てられ、不足した場合はこれを取り崩します。 「介護給付費準備基金」の保有が無い保険者は、都道府県が設置する「財政安定化基金」より借入れます。 「財政安定化基金」の財源は、当該都道府県全ての市町村が、第1号被保険料から賄う拠出金です。 借入れ時は、都道府県のヒアリングを受け、財源の不足状況などを確認されます。 財源不足が激しく、財政安定化基金の借入だけではどうにもならない場合などは、本来は不適切ですが、一般会計繰入金で、法定額(12.5%相当)以上を給付費繰入金として計上するしかありません。 実は、このような状況に陥っている市町村は非常に多いのです。 これに該当する市町村は、介護保険料をあまり上げてしまうと高齢者等の生活に係わる。しかし・・・というジレンマの中、介護保険事業計画を策定しています。 検討されている障害者施策との統合は、この問題を何とか解決したいとの思惑があると考えられます。
【介護保険運営の仕組 (例)】 これは、自治体によって様々でありますが、ごく基本的な例で説明します。 介護保険者の体制は、中規模の市で、「保険料収納」を税務関係課で行い、主管課を、福祉事務所などに置かれる高齢・福祉関係の課などで、「介護認定係」と「介護保険(給付)係」の2列体制というふうな感じが多い気がしますが、政令都市などではもっと役割が細分化されていると思われます。 逆に小規模自治体では、保険料も、認定も給付も全て「介護保険係」が行い、認定審査会は共同設置で行っている、といった感じの町村もあるようです。 「資格管理(被保険者台帳の整備) 〜 納付管理、受給者管理、給付管理の基礎となる」 住民基本台帳を基に、第1号被保険者、第2号被保険者の台帳を作成します。 所得など、税情報や、福祉事務所と連携しての生活保護受給者情報、適用除外施設などと連絡しての入所者情報などと突合させながら、第1号保険料の賦課などを適切に行っていきます。 「保険料納付管理」 資格管理で整備している情報をもとに、保険料徴収を行う。滞納状況などを管理しながら、受給者管理及び給付管理につなげていきます。 「要介護認定資料の作成」 要介護認定調査(原則当該市区町村職員が調査。更新申請分などは居宅介護支援事業者などに委託も可)を行います。主治医意見書の作成を申請者の主治医へ依頼します。 主治医意見書の取得を速やかに行うために申請者に直接依頼させる市区町村もあるようですが、大多数は市区町村による依頼で行われると思います。 調査票と意見者が揃ったら、これに基づいてコンピューターによる「1次判定」を行い、審査会資料を作成し、介護認定審査会の準備を行います。 「介護認定審査会の設置、運営」 医療・保健・福祉、各分野の専門家などで構成され、要介護認定の2次判定及び介護、予防の区分の決定を行います。 この審査判定に基づいて、市区町村長が認定します。 合議制であり、審査会会長の職務代理として、合議体長が仕切って会議が進みます。 市区町村の事務局などが立会い、会議録を記録しています。これは、都道府県の「介護保険審査会」などへ不服の申立てがあった場合などに必要であります。 市区町村ごとに設置されるが、近隣の小規模な町村などで「共同設置」で運営されている場合もあるが、近年の「市町村合併」によって共同設置の介護認定審査会はかなり減っていると思われます。 保険者機能そのものを共同で行う「広域連合・事務組合」などもあります。 「受給者管理 〜 受給者台帳の作成」 認定申請から、介護認定審査会の進捗状況や認定結果の管理、居宅介護サービス計画の届出の管理、介護保険施設の入所、退所の連絡や、他市町村との連絡をもとに「住所地特例者及び他市町村住所地特例者」の登録。負担限度額申請に基づいた負担額減免の管理などを行います。 資格管理及び納付管理の情報などとも突合しながら、受給者として適当かを判断。 「国民健康保険団体連合会」へ、受給者異動情報を月々連絡して、保険給付管理につなげます。 「保険給付管理」 国民健康保険中央会が提供する介護給付費管理標準マスタを必要に応じたライセンス数導入し、属する都道府県の国民健康保険団体連合会(以下国保連)とは、受給資格の異動情報を連絡したり、事業者からの介護報酬請求の情報を受け取ったりしながら、給付管理を行います。 レセプトに相当する「給付管理票」のチェックを行ったり、給付の適正化を図るため、給付実績を様々な角度から分析します。 不適切な給付があった場合は、サービス提供事業者に「過誤依頼書」を提出させ、国保連へ「過誤申立」を行うなどして給付の適正化に努めます(事業者が請求誤りに気付き、自主的に過誤依頼書を提出する場合もある)。 資格管理の情報をもとに把握されている所得段階などをもとに「利用者負担段階」を決定し、「高額介護サービス費」の申請に基づいた支給を行います。 住宅改修、特定福祉用具購入の支給申請に基づいて支給及びその限度額管理を行います。 「事業状況報告」 国民健康保険と同様に、事業状況報告(月報及び年報)を、都道府県が取りまとめて国(厚生労働省)に報告します。これは、調整交付金の調整交付率の根拠となったり、地方交付税などにも影響しており、かなりシビアに取り扱われています。 また、各、事務処理の時に表れる数値との整合性を確認したりもしているようです。 「住民への周知 〜 被保険者や受給者への各種通知」 保険料関係の通知、要介護認定結果の通知、高額介護サービス費支給申請の案内など、市区町村の住民サービスの一環として行われます。 制度改正であるとか、3年ごとの介護保険事業計画の見直しに関することなど、広報紙掲載、または説明会を開催するなどして周知につとめます。 「事業計画策定委員会の開催」 事業計画は、市区町村で、現在の人口、高齢者数、要介護者数、サービス利用意向調査などをもとに、計画年度の人口やサービス利用量などを推計しつつ、今後の整備計画を踏まえた供給可能量と合わせて、ワークシートでかかる費用を推計、算定。準備基金の取り崩しや、財政安定化基金の借り入れまたは返済などの財源補填計画を合わせて、第1号被保険料を決定するのですが、この計画の内容をこの会議で議論し、検討します。 メンバーは、医療や福祉、住民代表などの有識者などであり、まずここで承認され、市区町村の定例議会で審議 、認可され、第○期介護保険事業計画に基づく第1号被保険料が決定します。 「地域包括支援センターの整備、運営」 委託か、直営か? これについては、自治体によって様々です。 しかし、直営、委託どちらにしても、地域包括支援センターは、「保険者機能」の位置づけだと思われますので、ここで一つの例として、下記の図を掲載します。
委託・直営各モデルフローチャート図(例)
「都道府県との連携して、介護保険事業者などへの指導や助言」 指定や指導、監査の権限は都道府県知事にあるため、市区町村はそれに随行し、補佐的な役割として指導や助言を行ってきました。 「給付の適正化には保険者機能の強化が必要不可欠」として、事業者の指定や取消の権限は都道府県ですが、市区町村の権限の見直しなどが行われています。 「地域密着型サービス事業者の指定及び指導」 新たなサービス体系である地域密着型サービスは、市区町村の裁量により、「事業計画」などを踏まえて、事業者の指定や整備を行って行きます。 全国的に保険者の思惑の傾向としては、制度開始当初からあり、平成18年度の改正で「地域密着型サービス」として位置づけられた「グループホーム」は抑制しつつ、「小規模多機能型居宅介護」などの整備の方を進めていきたいというふうな状況のようですが、今後どのようになるのか、注目されます。 【保険者と事業者の連携 〜 住民のため、利用者のために】 保険者「市区町村」は住民サービスとして、事業者は利用者のため、立場としてその呼び方は違えど、共通するサービス提供対象者のために、連携しなければなりません。 とは言え、近年は「個人情報保護」などの理由から、色々なしがらみがあり、難しいこともありますが、市区町村は条例の制定や、施行規則などで必要な連絡のやりとりを可能にするなどして、住民のプライバシーは守りつつ、介護保険などのサービス利用に支障や不利益が無いよう、しがらみを取り除く努力をします。 事業者サイドも、被保険者証の確認は利用者さん本人またはご家族から行う。原則、保険者に問い合わせることは避けること。 お互いが出来ることは各々で行い、必要な情報のみ、決まりごととして行うこと。個人情報のやりとりは、必要最低限で行い、住民、利用者に対して不利益がないようにします。 (介護保険施設等入所・退所の連絡) 直接影響がないため、行っていない施設もあるかもしれません。 これは、保険者の「被保険者台帳、受給者台帳」の完成度を高め、保険者サイドからの、利用者及び事業者へのアプローチを容易にします。 負担限度額の有効期限「6月末」が近づいた時、当該利用者の保険者から施設へ連絡が来れば、事務処理もスムーズでありましょう。要介護認定有効期限も同様です。保険者によって違うかもしれませんが、「住所地特例」などの保険者サイドの適切な取り扱いには、利用者本人か、介護施設などからのいずれかの連絡は必要です。 また、住所地特例の取り扱いがある場合は、市区町村同士でも連絡票のやりとりがあるようです。 (参考:例) A町 → 一旦B市で在宅 → B市の施設入所 保険者はB市(住所地特例の取り扱いなし) A町 → B市の施設入所 保険者はA町(住所地特例となる) (各種、申請援助) 介護認定申請の更新、負担限度額申請などの申請援助など、事業者と保険者が出来る範囲内で連携し、利用者などに不利益が生じないように努めます。 (保険者から事業者への資料提供) 要介護認定申請時、申請者(認定後利用者となる)は資料の提供に同意します。 居宅介護支援事業者「ケアマネージャー」は、ケアプラン作成のため、保険者が保管している利用者の調査票及び主治医意見書の請求を行います。保険者は、これを速やかに提供します。 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などに対しては、入所判定の資料として、当該施設へ申し込み済待機者の調査票や1次判定資料などを提供することもあります。 【保険者を支える企業や団体】 「社会福祉協議会 (社協)」 都道府県、市区町村にある半官半民の社会福祉法人。介護保険施行前は、行政サイドの位置づけといった性格が強く、特に田舎などでは、社協に就職したことは公務員として自治体に勤務することとなるということに変わりがなかった程だと聞いています。 介護保険では、居宅介護支援事業者と介護サービス事業者といった通常の介護保険サービスを行っていますが、現在でも、当時の措置時代の名残が残っている法人もあり、福祉の推進にはボランティアなどの力は重要であり、こういった観点から、他の民間事業者には出来ないことなども行います。 例えば、制度改正などに伴う新規事業などで、他の民間事業者等がやりたくないような事業であれば、結果的には社協が引き受けるといったケースが多いようです。 「国民健康保険団体連合会 (国保連)」 東京都にある「国民健康保険中央会」と、各都道府県に「国民健康保険団体連合会(以下 国保連)」があります。 介護給付費の審査、支払い「事業者の介護報酬の請求を審査、支払いし、各保険者に当月かかった介護給付費を請求する」を行うだけでなく、利用者の苦情相談窓口として、市区町村と連携をとりながら取り組んでいます。 給付の適正化を図るため、市区町村に対して、データーを分析するシステムなどを提供したり、助言したりしています。 他には、「第三者求償事務」は、必ずではありませんが、殆どの市区町村は国保連に委託していると考えられます。(第三者求償とは、第三者の行為により、医療や介護を受けなければならない状態になった場合、医療保険者や介護保険者は、その加害者から、被保険者にかかった療養費や介護サービス費を請求すること」。 介護保険事業者が、不適切な事業運営などにより得た介護報酬を返還させる時、事業者が納得せず、訴訟などの問題になった場合も、「国保連」に協力をお願いすることが多いようです。 このように、通常の審査支払い業務をはじめ、市区町村では難しい高度な法の解釈やより専門的な知識を要する場合などにも活躍します。 「介護保険事務システム構築業者 〜 頼れる保険者のパートナー」 上記で説明している、被保険者台帳の管理などなど、これを見た方は、想像したら気が遠くなる作業だと想像するかもしれませんが、勿論、今時、手書きの帳票による台帳管理などするはずがありません。 とはいえ、昭和時代、戸籍とか、税とか、当時は手書きの帳票で住民情報などを管理していたのかな・・・などと思えば、もし、この介護保険制度が戦後間もなく施行されていたとしたら・・・これらの作業をどのようにしていくのだろうと想像したら、今、介護保険の被保険者となっている高齢者の方々は、すごかったんだなぁなんて思います。 話がそれてしまいましたが、現代では、コンピュータの、システムにより管理されています。 平成9年〜10年ころから、その当時はまだインターネットこそ普及していませんでしたが、仕事の道具としては普及してきており、殆どの市区町村は、既に住民情報をはじめ、住民税、国保、老人医療などのシステムは構築済であったと考えます。 このころ、介護保険のシステム構築費として、国から市区町村に補助金が交付されており、市区町村は、既存の住民情報システムにつなげて、介護保険の一連の業務を行う、システム構築をこれらの業者に任せることとなります。 「超高齢社会への準備」のページで、介護保険施行準備は市区町村の苦悩の連続という記述がありますが、市区町村とともに、苦労しながら、制度を軌道に乗せた担い手としては、影の功労者と言えます。 まず、制度改正に対して、保険者やサービス提供事業者よりもアジャイルに反応し、対応する必要があります。 まだ国会で審議中の段階でも、「9割がた可決成立するだろう」くらいの勢いでシステムへの反映を進めていかなければなりません。 市区町村は、条例の制定や取り扱いを行うなどは決定後にとりかかってもよいと思われますが、システムは、決定直後に、設定の変更一つで、それに対応したシステムに変化するよう、直前のところまで準備しておかなければならないところが辛いところであろうと想像します。 まだ新しい制度である介護保険は、今後も様々な変化を遂げるであろうと思われますが、これを「まいったな」ととらえるか、「信頼を勝ち取るチャンス」ととらえるかはそれぞれでしょうが、優秀な業者に当たった保険者と、そうでない業者に当たった保険者とでは、その苦労が雲泥の差となります。言わば、保険者の苦労のいくつかを被る役割もあると考えられます。 ちょっと他と変わった視点で捉えてみました。
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